簡易ソーラーシステムの試み1
*屋根面で集熱した空気を床下に送る/野木の家
「野木の家」が竣工して4年あまりが過ぎました。自邸という事もあって人様の家では出来ない試みとして普段から関心があったソーラーシステムを組み込んであるのですが今回はその評価を含めてリポートとしてまとめて見ました。現在はソーラーシステムも色々な方式があります。最近かなり増えてきた太陽光発電(太陽光のエネルギーを直接電気に変換)や空気を媒体とした方式の定番になっているOMソーラーシステム(太陽光の熱エネルギーを集熱し空気あるいは水を介してそれを循環させるなどして利用する)などそれぞれの特徴があります。
「野木の家」では大袈裟なシステムを組まずに簡単な工夫で太陽熱のエネルギーを利用できる方法を考えて見ました。(これは単に予算が無かった事が一番であるが言い訳をすれば、その気になれば誰でも組み込めるような簡易な方法を試みてみたもの)コストと施工の簡便さから私が選択肢として選んだのはOMソーラーの様に空気を媒介として太陽からの熱エネルギーを集熱し循環させる方式です。OMソーラーは実績も多くかなり完成されたシステムで空気を媒体として集熱利用したり水と熱交換してお湯取りを可能にするハンドリングボックスやそのコントロールシステムなども用意されています。但しそれなりの設計や施工技術が必要で誰でもと言う訳ではなくシステムについての技術講習を受けた設計者や施工者である必要があります。「野木の家」では特別な施工技術は使わず(OMソーラーの様に完成されたハンドリングボックスは用意出来ないので)に市販の機器(汎用のファンや温度センサーなど)を組み合わせて比較的簡易な施工で太陽熱利用を試みたものです。
「野木の家」で採用した簡易ソーラーシステムは空気を媒体として屋根面より太陽熱を集熱利用するもので原理的にはOMソーラーとほぼ同じです。違う所は施工の簡易化とコストの削減から屋根のガラス集熱面を省略した事とOMソーラーの場合は集熱した空気をダクトにより床下のコンクリートに蓄熱させるところを簡易ソーラーシステムの場合、床下のコンクリートの蓄熱も期待していますがそれに加えてアクアレイヤーヒーティングシステム(*注1・長いので以下ALHSと表記)のアクアセル(水の入った袋)に蓄熱させる事を期待しました。「野木の家」で採用したALHSはアクアセルの高さが9cmあり高熱容量タイプのものを採用しました。深夜電力により夜間に蓄熱し日中に徐々に放熱するものです。ALHSとソーラーとを組み合わせた場合どうなるかと言う事が一番関心のあった点です。
* 注1 アクアレイヤーヒーティングシステムとは(株)イゼナの床暖房システムでアクアセルと呼ばれる水の入った袋を根太間に設置し、それをセル下部に設置したヒーターなどにより暖めるもの。アクアセル内部の水の対流を利用しているのでヒーターはセル下全部の必要は無く中央部のみで済む事と低温水(35℃程度)による緩やかな暖房感が特徴。熱源は深夜電力、ヒートポンプ等が利用できる