山下建築研究所/栃木・埼玉・茨城・群馬・関東エリアを中心に活動しています/栃木県の建築設計事務所

TOP | COLUMN | 設計事務所の仕事

COLUMN

住まいに関する話や思いなど
住まいに関する話や思いなど
これまでに小冊子などに書いてきたものをまとめました。

 設計事務所の仕事

 
4番目の設計室

 *4番目の設計室/栗橋の家
 
 日本には古くから、棟梁と呼ばれた建築工事のまとめ役がいました。棟梁は設計者であり、施工者であり、工事を監督し管理もする総合職でした。いまでもそれぞれの地域には、工務店や建設会社があり、守備範囲は多少変わったものの、住まいづくりなどにおいては、工務店(大工さん)の設計、施工というケースも多く残っています。明治以降に外国の様式建築と共に入ってきた建築家といわれる設計の専門職は、現在は設計事務所や建設会社などにいる建築士という、建設大臣あるいは都道府県知事によって認められる有資格者ということになっています。
 日本においては、設計という仕事が歴史的には比較的新しく確立された分野である事と、古くからある棟梁や工務店といった請負体制が確立されている事から、設計事務所の役割というものが、一般の方々にあまり知られていない面が有ります。工務店に頼めば、全て間に合うのになぜ、設計料という費用を払ってまで、設計事務所に、仕事をしてもらわなければ行けないのか?疑問に思っている方もいらっしゃると思います。

 設計事務所の主な業務としては

1)建築主さんの要望にもとづいて企画、立案等の具体的な設計業務

2)その建築計画を役所に確認してもらう確認申請業務

3)現場が設計図どおりに施工されているか監理する監理業務

 などがあり、これらの業務の間に、工務店の選定や、工事の見積書が妥当なものかどうか判断し、建築主さんに助言を行ったり、材料の色決めに助言を与える等々・・多様な業務があります。基本的に建築主さんの代理人として、建築主さんの立場に立って、工務店さん達との間に入り設計から、工事監理までを総合的に見る事になります。設計と施工が分離されているので、設計図どおりに施工されているかどうかのチェックや是正も公正に行う事ができます。

 皆さんの中には、2番目の確認申請業務を主な仕事と思われていて、平面図と立面図に申請書類を書いてもらって、それが設計だと思われている方もいるかも知れません。これは設計業務のほんの一部であって本来の設計業務とは程遠いものです。
 設計作業は、現地調査、建築主さんの意見をよく聞いてからの基本設計図の作成、これを元にした建築主さんとのキャッチボールを何度か繰り返し、ようやく一つの案に収束していきます。この過程が大切なのです。時間を急いでこの部分をおろそかにすると、後で自分の希望に添わず、設計変更などという事態が起きることもあります。設計変更は多くの場合、時間とお金の無駄づかいとなるケースがあるので、その前の基本計画を慎重に進めることが大切です。
 基本計画が出来ると、それを元に実施設計という、より詳細な設計作業に入ります。これによって窓の大きさや棚の高さなど、細かな寸法関係も決まりますし、どこにどんな仕上材料を使うかもこの段階で決定されます。構造関係の図面や、設備関係の図面もこの段階で作成されます。出来あがった実施設計図を元に、建築主さんと打ち合わせを行い、細かな納まり関係もこの段階で再確認します。必要に応じて模型やパース(完成予想図)を交えての打ち合わせとなる事もあります。
 こうして実施設計図がまとまると、こんどは工務店さんに見積りを依頼する事になります。通常は3社程度から見積りを取って一番安い所と契約をするのが一般的です。ここで気をつけなければ行けないのは、出てきた見積りが妥当なものであるかどうかの判断です。明細に出ていても、数量や単価が適切でなければ意味がありませんし、高い安いの判断も工事総額だけでは無く、明細をチェックしてみないと正しい判定はできません。一見、安い見積り金額が提示されても、内部に拾い落しがあったりすれば後々でトラブルの元となります。こういった判断は、素人には不可能に近く、経験を持った専門家(=設計者)でなければ出来ません。
 無事に工務店さんが決まり、工事が始まると、設計者は設計図どおりに工事が進められているかどうか、監理という業務に入ります。工事中は大工さんを始め、水道屋さんや、電気屋さん、色々な業種の人々が現場に入ってきます。それぞれ、設計図どおり間違っていないかどうかのチェックや、相互の調整作業が必要な場合もあります。変更等があれば即、現場に反映させなければなりませんし、工程の変更や調整が必要となる事も良くあります。
 工事も大詰めをむかえ竣工が近づけば、最終的な竣工検査があります。問題となる点がないかどうか、全体にわたってチェックを行います。問題点があれば、手直し等の指示を出し、再検査の上、全ての項目で、問題がないことを確認して、ようやく建築主さんに引き渡す事ができるのです。
 

  LinkIcon