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住まいに関する話や思いなど
住まいに関する話や思いなど
これまでに小冊子などに書いてきたものをまとめました。

次世代に引き継ぐために

松本市内の民家

*太い梁が縦横に走る小屋組/松本市内の民家
 
  多くの人々にとって住まいづくりはおそらく一生に一度の大事業であろうと思います。長い年月をかけて自己資金を貯め、20年以上のローンを組んでようやく実現するケースがほとんどでしょう。一方でそんな大変な思いをして建てた家がわずか20~30年程度で建て替えられてしまうという現実があり、こんな住まいづくりでよいのだろうかと釈然としないのは私だけではないと思います。 
 多大の資源と労力をつぎ込んだ住まいを建て替える時点でそれは巨大なゴミの塊となり環境問題を抱え込む事となります。これからの住まいは今までのような短いサイクルで消費されるのではなく三世代、100年程度は住みつづけられるような住まいとしなければいけないのではないかと私は考えています。 
 
 ではそんな住まいづくりはどうしたらよいのでしょうか? 
 
1)物理的に耐久性の高い構造とすること。 
2)将来の変化に対応できる融通性の高い間取り、増改築可能な構造とすること 
3)進化が早く寿命の短い設備機器などは取替え可能な構造、工法を採用しておくこと 
4)これが一番難しいかもしれませんが住まい手が愛着のもてる住まいとすること
5)適切なメンテナンスをすること 

私はこの5本の柱が満足させられれば100年のハードルもそう高いものではないと思っています。最初の3本の柱は設計、施工の努力で比較的達成できそうに思いますが、4本目の柱を満足させることは少し難しそうです。 
 「愛着のもてる住まい」言葉でいってしまうのは簡単ですが、このような住まいをどう創るのか?設計者として一番悩むところでもあります。設計者から色々提案することもありますがその前に、住まい手の方々にお願いしたいことがあるのです。 
 それは、住まい手の方がそこでどんな生活をしたいのか自分自身(あるいは家族)の考え方をなるべくしっかりと持つ、はっきりとさせるということです。その上で設計者は色々提案を出します。住まい手と設計者の間でキャッチボールが繰り返され、提案はだんだんと住まい手にフィットした愛着の持てる住まいに近づけていくことができると思うのです。ご主人、あるいは奥さんの考え方だけではなく、お子さんや、おばあちゃんも含めた同居家族の話し合い、みんなで創った住まいなんだという意識が生まれるようなコミュニケーションが大切であろうと思います。
 
 みんなの思い出の詰まった気持ちの良い住まい。そんな住まいなら簡単に建て替えてしまうのではなく、手を入れながらも大切に住み続けることが出来る長生きできる住まいとなるのではないでしょうか。
 

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