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住まいに関する話や思いなど
住まいに関する話や思いなど
これまでに小冊子などに書いてきたものをまとめました。

健康で安全な素材へ

全て杉材/立木の家

*床・天井・柱・梁全て杉材/立木の家
 
 最近は住まいにおいても「健康」という言葉をよく耳にする様になりました。「シックハウス症候群」という名の、いままで聞いた事も無かったような新しい言葉と共に、新聞やテレビ等の話題に上り、皆さんの関心の高いところと思います。このシックハウス症候群の元凶は住まいを構成する建材や接着材、白蟻駆除剤などにある事はご存知の事と思います。 

 現在使われている建材の中で化学物質汚染の可能性の高いものを上げて見ると、まず合板類が上げられます。床や壁の仕上材として使われる表面に天然木を貼り合わせた合板や、下地材や構造材として使われるラワン合板や構造用合板などがあります。柱や梁など構造材として使われる集成材や化粧として使われる内装用の集成材の中にも使われている可能性があります。これらはその接着に使われているユリア系、ユリア・メラミン系の接着材に主成分として含まれるホルムアルデヒドの放散がもたらす空気汚染です。 

 内装用の壁紙類の多くは塩化ビニル壁紙であり、この中にはホルムアルデヒドをはじめ溶剤として、トルエンやキシレンといった物まで含まれているようです。同様に内装用の塗料の多くや、塩ビ系のシート床材なども、これらの成分が含まれています。一見、天然素材に見える畳なども、表や畳床などに残留農薬や防虫剤等での処理がなされている事もあり、必ずしも安全とは言えません。 
  
 これまでの経験を踏まえて、これからの住まいづくりを考える場合、どんな建材を選択すれば良いのでしょうか。化学合成されたものではなく天然系の素材を利用した方が健康に良さそうなのはわかりますが、単純に工業化製品よりも天然系の建材が良いのかと考えると、一概にそうは言えない所があります。例えば木材、貴重な天然資源の有効利用を考えると、合板や集成材の技術を使えば、本来は建材には使えない部分まで使いきることが出来、寸法安定性にとみ、強度のばらつきの少ない、優れた建材となります。丸太から切り出したままの無垢の木材のみで、同様の寸法安定性や強度の確保を保つ事は容易ではありませんし、端材の有効利用も図れません。 

 ユリア系に替るフェノール系などの、より安全な接着材の使用により、VOCと呼ばれる揮発性の化学物質の放散はかなり押さえられます。合板類について言えばF1タイプと呼ばれるものならホルムアルデヒドの放散量は0.5mg/l以下の規格となっており0ではないものの、かなり低減されています。 

 壁紙類についてみれば和紙、ケナフなど塩ビを含まない素材の製品もありますし、その接着材もノンホルムタイプの製品も出回っているようです。塗料も同様に有機溶剤を含まない、オスモやアウロと言った天然の素材を使ったものが、市販されています。 

  これからの住まいづくりは、安易に工業化製品を否定し安全な自然素材の製品に切り替えるといった事ではなしに、両者の良い面を生かした建材の開発、選択が重要な事になると思います。これから始まる私の現場では、地域産材を使った在来軸組工法に、F1タイプの合板を使ったパネル工法を採用して工事の合理化を図っています。ローコストで安全、快適な住まいを目指し、日進月歩の技術革新の中、設計者としても常日頃の情報収集や自身の研鑚を怠れないと痛感しております。 
 

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