リフォームの話 4
*玄関天井、既存天井をそのまま残しています/宇都宮市F邸
― 壊すものと残すもの ―
耐震診断や耐震改修設計により構造的なまとめ方がはっきりしてくれば、それを基 にようやく本題の使い勝手を含めた間取りや仕上げ方など意匠的な部分に入ります。 事例のお宅は農家住宅の典型のような間取りをしており各室が襖で仕切られこれを取り去れば大広間として冠婚葬祭などの大勢の客寄せにも対応できるような作 りでした。ただ住まわれている方はこの様な間取りと使い勝手には満足されておらず個室を重視したどちらかと言えば洋風の室配置の方を望まれている事がわ かったので外観は民家ですが内部は個室重視の洋風の間取りとしています。(このあたりは住まい手である建て主さんの考え方により大きく違うところではあり ます)このことは耐震改修上、耐力壁の分散配置に役に立っています。その分、家族が集まる居間や食堂、それに連続する土間などは広く一体感を持った空間と しています。引き込み可能な建具などで可変な空間に仕切ることが可能で多様な使い方にも対応できるように設計しました。
間取りの変更や部屋の交換などにより日照や採光、通風等の室内環境を向上することができる場合もあります。隣家を含めた周囲の状況調査を踏まえ部屋間の間仕切り変更や撤去、室交換などもそれが可能な場合には有効な手段と言えます。
事例のような全面リ フォームではあまり問題になりませんが部分的なリフォームの場合では新旧の区分けをどこにとるかは中々難しいものです。一部を新しくすると古い部分は余計 にそれが目立つこともありますのでそれをうまくさばいて徐々に新しい空間へと導くような工夫が必要な場合も出てきます。当初は予定していなかった所でも前 記のような関係で多少手を入れてあげるなどの追加的な改修が必要となる場合もあります。
長く住んでいると住まいの一部に対して愛着のあるものや思い出があり大切にとっておきたいものなど人それぞれでしょうがお持ちの場合もあります。(家具や建具、床框、天井板等 々・・・)そのような場合それをうまく生かして新しい空間に活かすことも大切です。この事例のお宅でも玄関の天井や茶の間の建具、和室にあった繊細な格子の書院窓の建具などをそのまま残したりあるいは場所を変えて再設置したりと新旧をうまく組み合わせて残す工夫もしています。
環境面に関しては古い建物(特に民家型の住宅など)では断熱なども不十分というか、ほとんどなされていないと言う状況ですので断熱改修をすると生活環境は大幅に向上します。暑さ 寒さに対する不満には建物の断熱性能を高くする事は大いに効果を上げる事ができます。断熱工法には外断熱工法や充填断熱工法などありますがどちらを採用しても正しい施工方法をとれば問題なく効果を上げる事ができます。(断熱材メーカーの提灯持ちのような本も出されているようですがどちらの工法にも一長一短 があります。要は正しい施工方法が取られているかです)