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住まいに関する話や思いなど
住まいに関する話や思いなど
これまでに小冊子などに書いてきたものをまとめました。

民家に学ぶ

松本市内の民家
 

 *骨太の柱・梁で構成される土間/松本市内の民家

 

 最近、近県の民家を何軒か訪ねる機会がありました。いずれも入口をくぐると薄暗い感じのする土間(土を固めた床、たたきとも言います)が出迎えます。暗さに目が慣れてくると磨かれて黒光りしている大黒柱や大梁が飛びかうダイナミックな小屋組に圧倒されます。一般に開放されている為、今はありませんでしたが、かつてはこの土間が台所や浴室につながっていて普段の生活が営まれていたのでしょう。ここから一段(40~50cm)高くなって板か畳敷の座敷があり、いろりが切られていて茶の間として使われていたようです。奥にも座敷が続きますが、中段の間、上段の間など部屋の並び方も当時の時代背景が感じられます。 

 私は現代に残っているこれらの民家に、住まいづくりの原点を見せられた気がしています。一つは素材です。土壁や板張りなど天然素材しか使えない時代から、ビニールクロスや合板類、合成塗料、接着剤など、工業製品を当たり前のように使って現代の住まいはつくられています。しかしこれらの中にはアルデヒドなどの健康に有害な物質が含まれているものがあり、それが空気中に放出されていることに気づき始めました。 

 間取りの融通性の良さも見習うべき一つではないかと考えています。室ごとの機能を重視してつくられる現代においてそのまま当てはめるわけにはいきませんが、用途を限定しない融通性を持たせた室づくりは予想しがたい将来において、住まいを永く使うための重要な要素であると思います。これ以外にもまだ見習うべきところはありますが、それについては次回にお話させていただきたいと思います。 
 

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